【すさみ町へ】
紀勢自動車道を終点のすさみ南インターチェンジで降りると、必ずと言ってもいいくらいの頻度で立ち寄ってしまう道の駅すさみ。今回はその展望所から。旅女子は、伊舞なおみさん(写真右)と柳橋さやかさん。「比較的新しい展望台」と柳橋さんは言ったが、この道の駅ができたのが2015年9月、展望台は2018年4月。展望台ができて、まもなく5年。空は晴れて、暖かい。絶好の女子旅日和だ。
スタートは道の駅から
☆番組は、ここから聞くことができます。
展望台は、道の駅に併設のすさみ町消防団第二分団屯所の屋上だったりする。開放されている。2018年9月の「
すさみ・日置、海岸線をたどる旅(三浦ちあき&五島奈津紀)」で紹介した。2020年7月には隣接地に道の駅の第2駐車場ができた。今は、その先でさらに工事が・・・。今度は何ができるのか。どんどん充実の道の駅すさみだ。楽しみだ。
目の前には江須崎島
道の駅すさみの展望台
【フェニックス褶曲】
今回の旅は「フェニックス褶曲(しゅうきょく)」を見に行くのが目的。「フェニックス・クリフ(崖)」ともいわれる、南紀熊野ジオパークを代表するジオサイトの一つ。名前を聞いたことがある人も多いのではなかろうか。フェニックスは、地域名の天鳥(あまどり)が由来といわれている。海底の地殻変動でつくられたダイナミックな地層で、波打ったり折れ曲がったりした岩景色が見られる。中学校の理科の教科書に掲載されるほど貴重な、珍しい地層で、知名度もあり、人気だ。専門的な知識がなくても楽しめる(はず)と思い、旅を企画した。そんな訳で、この日の女子の服装は、長袖、長ズボンにスニーカー、手袋、マスク、加えて、ヘルメットと、万全の探検スタイルとなった(ヘルメットは貸してくれる)。加えて、両手が使えるのが良いので、荷物をリュックに入れ、背負った。道中の会話を安全に収録するために、胸元には、ワイヤレスマイクも装着した。完璧だ。そして、ここは、すさみ町口和深(くちわぶか)の国道42号沿い。ここから、フェニックス褶曲がある海岸部へ山道を降りていく。なので、まずは、ストレッチ。今回は屈伸から旅が始まる。
気分は探検隊
まずは屈伸運動
フェニックス褶曲は、吉野熊野国立公園の特別保護区、スペシャルゾーンにある。これまで、フェニックス褶曲がある海岸へのルートは知る人ぞ知る山道、難所だったが、環境省が、園地整備を行い、案内板や歩行補助のステップや鎖などを設置した。そして、今月(2023年3月)から、一定のルールのもと、ジオガイドが同行することで、誰でも、訪ねることができるようになった(申込方法などは後述する)。一方、入口にはフェンスが設けられ、普段は施錠されている。ガイドなしで訪れるのは危険だからだ。参加者は、すさみ観光案内所 SUSAMI TRAVEL COUNTER FRONT110(2021年9月「
すさみ、穴場を訪ね、奥深さを知る旅(三浦ちあき&柳橋さやか)」で紹介)で受付を済ませ、この場所へやってきた。
入口の鍵を開けて
水のない川沿いを進む
最初は、木々が生い茂る中ではあるが、緩やかな下り坂で歩きやすい。しばらく行くと、水のない川沿いに出る。川の中も歩いたりする。竹や草が生い茂る山道。先頭を行くガイドが道を切り開いてくれる。女子たちは、ついていく。私たちを案内してくれているのは、南紀熊野ジオパークガイドの谷昭伸(たに・あきのぶ)さん。私たちが訪れた日は、他にも見学者があり、それぞれに、ガイドが同行していた。女子旅チームは先頭を行く。
ガイドが道を切り開く
木々が茂る中を進む
園地整備の一環で、フェニックス褶曲について、また、ルートについての説明板がある。新しい。途中には、小さな道案内も設置されていた。
説明板が新しい
道案内もある
ヤブツバキやウバメガシが茂る中を歩いて行く。下りなのがありがたい。足元の小石と落ち葉が、前日の雨で滑りやすくなっているからと、ガイドの谷さんから注意があった。女子たちは、声を掛け合いながら、ゆっくりと進んでいく。歩き始めて数分ほど経った頃だろうか、山歩きの音に混じって、水の音が聞こえはじめ、やがて、波の音だと気がついた。そういえば、潮の香りも感じられる。しばらく行くと、木々の間から海が見え始めた。そして、急な下りに変わり、木の枝や地面をつかんで、ゆっくりと降りるように指示される。
崖を降りる伊舞さん
急斜面を降りる柳橋さん
林を抜けた。海が目の前だ。ガイドの谷さんが大きな赤い旗を設置している。「津波フラッグ」というそうで、地震や津波発生時に、この旗を目指して逃げると帰れる(高台へ通じる)という目印だという。
津波フラッグ設置中
津波フラッグ
海岸までもう少し。最後が難所だ。崖になっている。設置されている鎖を頼りに、ひとりずつ後ろ向きに降りていく。降りている時は気づいていないが、崖にも褶曲が見られる。
ひとりずつ後ろ向きに
崖を下る女子たち
崖を降りきった海岸は、大きな岩だらけ。その中をガイドについて歩いていく。波が、岩の裂け目に打ち寄せ、大きな音を立てている。フェニックス褶曲見学は、干潮の時間帯だけ、訪ねることができる場所となっている。
岩場を進む女子たち
ガイドの後を進む
ゴールがどこだかわからずガイドについて行くと、ある岩の上で「振り返ってみて」と言われた。ドドーン!!「フェニックス褶曲だぁ」とはならず、ごっつい岩、斜めの線がカッコイイなどという感想。実は、この場所、ゴールには違いないが、いわゆる「くの字」に曲がった岩を間近だが、横から見る格好になっている。つまり、見えている線こそが、褶曲そのものなのだが、よくわからない状態。全容を見ることができていないのだ。
崖を登る柳橋さん
ここがゴールか?
そんな女子たちに、ガイドの谷さんから声がかかる。まだ先に行くようだ。アクション映画の俳優さながらに、岩に張り付き、谷を渡り、崖を登る。
崖伝いに進む
ガイドの補助で谷を渡る
ビューポイントを目指しているのだが、波が洗う岩場を越えて行くため、天候などによって行けないこともあるとか。この日は、行けた。そして、眼前に広がるフェニックス褶曲の全容は息を呑む。こんな景色は見たことがない。そして、大きい。ようやく、驚きと感動を体感する。
海の近くの岩場を進む
これだぁ!すご~い
ガイドの谷さんが、図や写真を見せて、解説してくれる。時間スケールもサイズ感も、色んなことが大きすぎて、いまいち実感しにくい女子たちだが、その迫力、スゴさには驚かされ、自然の力、造形美に感激しきり。
ガイドに教えてもらう
説明に聞き入る
簡単に整理すると、日本がまだ、今のカタチではなく、中国大陸にくっついていた頃(5000万年前から2500万年前あたり)、海洋プレートが沈み込む際にくっついた岩が、固まりきる前に、大きな力に押されて、波打ったり、曲がったりして、褶曲が形づくられた。この時点では海底にあった褶曲が、地震活動などで、地上に持ち上げられ、今度は、波や風雨で削られたり、割れたりして、今、ここで、岩の断面として、地層が見えている、ということらしい。壮大すぎる。
上ったり
下ったり
少し移動するのも一苦労。そんな岩場を上ったり下ったり。そして、地形や地層、地球の歴史についてガイドに教えてもらう。
説明中のガイドと女子たち
褶曲を説明するガイド
ウレタンを使った褶曲の説明はわかりやすい。押されて曲がる地層。こういうのはガイド各人の工夫なのだという。
亀裂だらけの岩
断面が平らな岩
褶曲はシンボルだが、亀裂だらけの岩や、平らな断面で切れた岩、斜めに立つ岩など、あたりは、珍しい地形の博覧会状態。
曲がって立つ岩の前で
曲がって立つ岩の下で
ビューポイントからはこれぞ!というフェニックス褶曲の全容を見ることができるが、その大きさを示すには間近に立つのが一番。人間とのサイズ感をどうぞ。
ビューポイントで
フェニックス褶曲は大きい
放送では紹介できなかったが、フェニックス褶曲へのルートの途中に、炭焼き窯の跡があった。ウバメガシが多いからか、かつて、備長炭を生産していたという。
炭焼き窯跡
炭焼き窯跡を上から
スタートから約2時間半、国道近くの入口へ戻ってきた。ガイドの谷さんは、仕事を定年退職後、知人すすめで観光ガイドを始め、やがてジオガイドになったという。しっかり話を聞いてくれると嬉しいといい、来訪者に再び訪れたいと思ってもらえるように案内していると話した。確かに、私たちも、また来たいと思った。そして、串本町潮岬にある南紀熊野ジオパークセンターにも立ち寄ってほしいと話していた。この施設は確かにオススメだ。2019年9月「
串本・古座川、ジオパークと伝説を訪ねる旅(伊舞なおみ&三浦ちあき)」で、オープンしたばかりのセンターを訪ね、この回では、かつてお世話になったジオガイドの女性との再会もあった。谷さんとも、またどこかで会うことがあるかもしれない。そんなことを思いながら記念撮影をした。
「フェニックス褶曲」見学について
2023年3月から、すさみ町観光協会に申し込めば、一定の条件のもと、誰でも見に行くことができるようになった。行きたいという人は、すさみ町観光協会、または、すさみ観光案内所 SUSAMI TRAVEL COUNTER FRONT110 のホームページを参照のこと。干潮になる時間帯や、参加の方法、注意点とともに、申込方法が記載されている。日程が決まれば、ガイドの手配などもしてもらえる。ガイドは有料。電話での問い合わせもできる。見学できる日時は、干潮のタイミングによって異なる。また、海から見学する漁船クルーズもある。ホームページは下記のリンク一覧を参照。
ガイドの谷さんと
【イノブータン大王】
旅のまとめは、すさみ町のシンボル、イノブータン大王と。すさみ町見老津(みろづ)のすさみ千畳敷近くへ。白浜町との町境近くのすさみ町周参見(すさみ)の県道(日置川すさみ線)沿いにもあり、行ってみた。いずれも、海難事故の注意喚起の石像。柳橋さんは、とても親近感を感じたようだった。並んで立つと仲間のようだ。
大王の石像と(1)
大王の石像と(2)
番組は、来月から7年目に突入する。これからの旅もお楽しみに。
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