【 熊野詣 】
熊野詣(くまももうで)とは、熊野三山(さんざん)を詣でること。平安時代、都があった京都から上皇や法王が大勢の供を連れて、何度も旅したという。交通手段のほとんどが徒歩だった時代に、往復600キロ。険しい山道も多かっただろうに。にわかには信じられないが、史実で、これにより、熊野信仰、熊野詣は全国に広がり、蟻の熊野詣という言葉が生まれるほどの人気となった。この参詣道が熊野古道で、その道中、参拝や儀式を行うなどした場所が王子(おうじ)、または、王子社だ。九十九(くじゅうく)王子といわれ、この九十九は99か所というよりは、たくさんを意味し、実際、100か所前後だったとされている。一方、「ラジオで女子旅」は、2017年4月に番組がスタートし、月に1度の放送で、今回が99回目。こちらはきっちりとしたカウントだ。
今回の旅をするのは、柳橋さやかさん(写真右)と関陽菜子アナウンサーの2人で、このコンビは2回目。関アナは、今年の1月旅で番組デビューだったが、6か月で4回目という、なかなかの頻度で出演している。関アナの女子旅になる日も近いかも知れない。この2人で、田辺市の扇ヶ浜(おうぎがはま)から熊野本宮大社への熊野詣をしてみた。関アナはともかく、柳橋さんも、初めて熊野本宮大社を訪れるという。

田辺市扇ヶ浜から
☆番組は、ここから聞くことができます。
このコンビの前回の旅とは、2025年4月の「
和歌山、低山登山を楽しむ旅」で、和歌山市の高津子山(たかづしやま)に登った。山頂展望台から和歌山放送本社を探してみたが、わからなかったのではなかったか。「今回は、和歌山放送田辺支局が見える」と関アナ。扇ヶ浜と県道をはさんだ場所にある扇ヶ浜ビル3階にある。次の写真で2人の左後ろに見える白い建物が扇ヶ浜ビルと思われる。ここの3階って・・・。

田辺市扇ヶ浜から
【 潮垢離 】
熊野詣の出発地はそれぞれだが、大阪側から府県境を越えて和歌山へと来る場合、海岸に沿って(海辺を歩くということではない)南下し、田辺から山中へ分け入り(中辺路ルート)、熊野本宮大社を目指したとされる。その際、参詣の旅人は、各所で、水で穢れを祓い、身を清めて、三山に向かったとされている。この行為を垢離(こり)という。実際に体の汚れを落とすということもあっただろうが、神様と対面する前の儀式、神事だったと思われる。そして、ここ扇ヶ浜では、海水を使い潮垢離(しおごり)を行ったとされる。そんな扇ヶ浜に、最近、潮垢離モニュメントができたと聞いてやってきた。砂浜より一段高い芝生の上に、白いモニュメントがある。斬新だ。

SHIOGORIモニュメント

SHIOGORIスマホ撮影台
SHIOGORIとアルファベット8文字のモニュメントは、海を背景にすっかり映えスポットとなっていて、撮影のためのスマホ台まであった。OやRの空洞から顔を出してみたり、夕陽を入れてみたりするんだろう。真っ白だから、夜は好きな色の照明を当てられそうだ。モニュメントの大きさは、アルファベット1文字が高さ150センチ、台座を含めると160センチとなり、ほぼ女子たちの身長と同じくらい。横に8文字並んで12メートルある。撮影してみた。

SHIOGORIで撮影会

SHIOGORIで撮影会
もうひとつ、潮垢離モニュメントがあった。こちらがメインと思われる。SHIOGORIモニュメント(オブジェ)には、全く説明がなかったが、こちらにはある。さらに三垢離(さんこり)めぐりのデジタルスタンプラリー用のQRコードもあった。扇ヶ浜と書かれた時計塔が目印になる。

潮垢離場モニュメント

扇ヶ浜の時計塔
海水を入れる空間もあったが、訪ねた時は入っていなかった(自分で入れるってことはないよね。知らんけど)。女子2人は、富田川の水垢離(みずごり)、湯の峰温泉の湯垢離(ゆごり)をあわせた三垢離場を訪ねてから、熊野本宮大社に向かうことにした。

潮垢離場モニュメント

潮垢離場モニュメントで
スタンプ台もあった。こちらはアナログスタンプ。いろいろある。そして、砂浜側にも行ってみた。田辺扇ヶ浜海水浴場は、7月1日に海開き、遊泳期間は8月31日までを予定している。

潮垢離場スタンプ

田辺扇ヶ浜海水浴場へ
【 水垢離 】
海に続いては、川の水で垢離をする場所。上富田町の熊野古道、稲葉根(いなばね)王子近くの富田川には、かつて、水垢離場があったらしい。誰もが体験できるようにと、2023年に体験場がオープンした。番組でも去年、柳橋さんが訪れている。2024年8月の「田辺・西牟婁、水辺を楽しむ旅」(三浦ちあき&柳橋さやか)だ。しかし、その時はなかった緋毛氈(ひもうせん)と赤い大きな日傘があるぞ。

水垢離体験場へ

水垢離体験へ
女子2人は早速、ベンチに腰掛けて、水流に素足を浸けてみた。冷た~い。でも、気持ちいい。そんな声がはじけた。

水が冷たい

水が冷たく気持ちいい
日傘を支えていたのは、上富田町在住で「口熊野上富田ガイドの会」の裏地好晴(うらじ・よしはる)さん。この日は、ガイド3人で、台湾からの団体ツアーの観光客を案内していた。緋毛氈(ひもうせん)も日傘もガイドが用意するのだという。女子たちが訪れた時は、ちょうど観光客が王子社見学に行っているタイミングだったので、話を聞くことができた。

ガイドの裏地好晴さんと

水垢離体験場での様子
裏地さんによれば、稲葉根王子は格式が高い王子で、御所もあり、参詣者たちが、神楽を見たり、歌会をしたりしていた。その際、前を流れる富田川に足を浸せば、過去の罪状や煩悩が全て払拭されるとされ、ありがたい水だと、人々がこぞって水垢離をしたという。しかし、長く途絶えていた。これを1999年に県南部で開催された地方博「南紀熊野体験博」で一時的に復活させたが、増水などで流されてしまったのだとか。そして、2023年、観光客に向け、通年で、休憩も兼ねて水垢離体験をしてもらえるように、右岸の河川敷の一角を整備し、水垢離体験場を開設した。駐車場も広い。体験場は、階段状のベンチになっていて、足元に水が流れている。いにしえの水垢離にあやかってかどうか、眼下を流れる富田川の水をポンプアップして流しているという。「日々煩悩を払いたいと思っている」と柳橋さんが口にすると、裏地さんは「それだけ浸けていると随分払えたんじゃないか」と笑った。

目の前を流れる富田川
【 湯垢離 】
3か所めの垢離場は、温泉を使った湯垢離。世界遺産登録された温泉「つぼ湯」でも知られる古湯、湯の峰温泉郷を訪ねた。車を降りた途端に、硫黄の香りがした。公衆浴場や湯筒(ゆづつ)の近くに行くでは、川から湯気が立ち上り、気温も湿度も高い。そして、温泉街の佇まいが素敵で「古い日本のいいところがすべてあるようだ」と柳橋さん。

湯の峰温泉郷

湯の峰温泉郷で
湯筒は、温泉の湯を手軽に活用できるようにオープンにした場所。とはいえ、温度が高いので、囲いがされていたりする。温泉卵が作れたり、野菜を湯通ししたりできる。そうだと知ると、女子2人は関心がそちらへ全振りとなってしまったが、その体験はまた今度とした。

公衆浴場が湯垢離場に

湯の峰温泉郷で
【 熊野本宮大社 】
熊野三山の一角、熊野本宮大社に到着した。大きな鳥居と八咫烏(やたがらす)などが描かれた幟旗が立つ。鳥居から伸びる参道の両脇には、杉木立と熊野大権現と書かれた奉納幟が並んでいる。そして、遠く石段も見えている。かなりありそうだと、ひるむ女子たち。

熊野本宮大社に到着

熊野本宮大社の鳥居前
参道は背の高い杉のおかげで日陰となっていて、暑さは和らいでいた。そして、石段の前に来ると、158段と書かれている。そして、参詣者は右側通行のようだ。柳橋さんは、徐々に息が上がっていったが、それほど時間はかからず上りきることができた。

参道の石段を上る

参道の石段はもう少し
社務所や授与所、拝殿などが並ぶ中、砂利道を進んで行くと、大きなしめ縄の神門(しんもん)が見えてくる。そして、神門の向こうに、社殿も見えている。

参道の石段を上りきった

神門をくぐる
女子たちは、神門をくぐり、境内に入った。檜皮葺き(ひわだぶき)の大きな社殿に圧倒されつつも、参拝する。

檜皮葺きの社殿が並ぶ境内

参拝する
九鬼家隆(くき・いえたか)宮司に話を聞かせてもらった。熊野三山は蘇り、再生の聖地で、神仏習合(しんぶつしゅうごう)の折りには、神と仏が同じ社殿にいたという。三山は、それぞれに役割がある。本宮は来世、未来に向かって祈りを捧げる場所。熊野速玉大社は前世、熊野那智大社は現世という。2人は、歩むべき未来へのエールを授けられたと感じ、思いを新たにした様子だった。そして、今年(2025年)は、旧社地に立つ日本一の大鳥居が建立25周年を迎えたという。

九鬼家隆宮司に話を聞く

神門前で宮司と
放送では紹介しなかったが、社務所の前には、八咫烏を載せた黒い八咫ポストがある。以前からあったが、今回訪ねると、地球を背負っていた。去年(2024年)、世界遺産登録20周年を記念し、世界平和と自然の大切さを表すために背負ったらしい。記念の小さな鳥居も乗っかっていた。そして、関アナウンサーは、御朱印集めに余念がない。「かっこよかったので、御朱印帳も買ってしまった・・・」らしい。

八咫ポストに地球

御朱印集めの関アナ
【 大斎原 】
熊野本宮大社に参拝した女子2人は、日本一の高さの大鳥居が立つ、旧社地・大斎原(おおゆのはら)を目指す。熊野本宮大社は、明治の大水害で社殿の大部分を流出していて、残った社殿などが高台の現在地に移されたという歴史がある。その旧社地を訪ねる。大社を出て、国道を渡り、世界遺産熊野古道館の南側の路地を歩いていくと、前方に水田が見えてくる。

旧社地大斎原へ

熊野本宮館南の路地
路地を抜けると、田植えが済んだばかりで、水が張られ、一面やわらかな緑色の田園地帯に出て、視界が開けた。まっすぐ伸びる参道の先に大鳥居が立っている。美しい景色だが、鳥居の大きさが際立つ。そして、近づくにつれ、高さ34メートルが現実感を帯びてくる。

田園風景の中、大鳥居へ

大斎原の大鳥居へ
女子たちは、大鳥居を見上げながらくぐり、さらに、旧社地の参道を進む。ここも杉木立に囲まれている。

大鳥居をくぐる

杉木立の参道
大斎原は、一段高く、緑が広がっていた。静かさが厳かさに通じ、過去の世界にやってきたような感覚にとらわれた。神聖な場所をいう雰囲気を纏っている。

旧社地は一段高く

緑が広がる旧社地
失われた社殿を祀る石の祠(ほこら)がふたつ並んでいる。清澄な佇まいが素晴らしい。女子2人は手を合わせた。

石の祠がふたつ並ぶ

参拝する女子2人
最後は、世界遺産熊野本宮館の裏側にある熊野川の土手に上ってみた。ここからの眺めも素晴らしい。大鳥居も見えている。

熊野川堤防からの眺め

熊野川堤防で
【 梅の日 】
女子2人が、熊野本宮大社を訪ねたのは、6月6日「梅の日」だった。梅が実り、本格的に収穫が始まる頃として、この日を選び、「紀州梅の会」が制定した。各地で行事や神事が行われた。ここ熊野本宮大社でも、朝から神事が行われた。

収穫されたばかりの南高梅
梅の日の神事では、収穫されたばかりの南高梅が奉納され、宮司による梅浸けの儀が行われた。また、今年は、初めて、梅酒の仕込みも行われたという。

宮司による梅漬けの儀

宮司が梅酒を仕込む
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