【 復興の鯉のぼり 】
新宮市熊野川町日足(ひたり)地区、近くを高架となった国道168号バイパスが通るこの地域では、5月の声とともに、田植えが始まる。新緑と水田、美しくのどかな田園風景だが、2011年9月の紀伊半島大水害では、熊野川の氾濫で、一帯が水没する大きな被害となった。その場所に、翌年から鯉のぼりが立つ。地域を激励しようと各地から贈られた鯉のぼりを地区の有志が立てているのだ。今は風物詩のようになり、「復興の鯉のぼり」といわれ、毎年楽しみにしている人も多いと聞く。その鯉のぼりの地から、今回の旅は始まる。旅人は、三浦ちあきさん(写真左)と伊舞なおみさん。このコンビで24回目の旅となる。月に一度の番組だから、この2人で2年分を旅していることになる。今回の旅は「行けるタイミングがあれば滝に行きたい」という伊舞さんのリクエストに応え、少し山に分け入り滝を目指す。
鯉のぼりが「5ファミリー」とは、珍しい言い方だ。5本のポールに、あわせて30匹ほどの鯉のぼりが泳ぐ。実際には、ポールは6本。でも、その1本には、鯉のぼりがない。それはともかく、この日は、風がやや強く、鯉のぼりは元気だ。
目指す滝は、日本の滝100選のひとつ「桑ノ木の滝」。その入口となる桑ノ木橋前に到着した。ここは、新宮市相賀(おうが)。復興のひまわりから、熊野川に沿って、国道168号を10キロほど南下。そこで、熊野川に注ぐ高田川に沿って遡るように車で数分というところ。ここで車を降り、山に入っていく。まずは、桑ノ木橋で高田川を渡る。水が透き通っている。女子たちが持っているのは、新宮市観光協会のサイトからダウンロードできるウォーキングマップ。
少し歩くと鳥居に気がつく。相賀八幡神社(おうがはちまんじんじゃ)だ。一見、朽ちかけているような佇まいで、鳥居をくぐると、境内は苔むしている。神秘な雰囲気を感じつつ参拝する女子たち。そして、脇にそびえる巨岩に気がつく。ここも、かつてあった社殿や社務所が、紀伊半島大水害で失われたという。今は復元された小さな社だけがある。
国土交通省のサイトによれば、吊り橋とは「塔の間をわたるメインケーブルから垂らしたハンガーロープで橋桁を吊り、支える構造の橋とのこととある。目の前に現れた橋は、マップには吊り橋とあり、形もそれらしいのに、どこにも吊られている要素がない。吊られていないどころか、川の中に、橋桁を支える橋脚まである。「吊り橋」という名の単なる橋というオチかと思うほどに謎だ! ここも水害の影響で橋が損なわれ、掛け替えられた可能性はある。でも、橋の姿は「吊り橋」そのもの。注意看板に従い、ひとりずつ渡る。ただ、当然というか、ほぼ揺れない。
わくわく感がある道中。遊歩道というにはアドベンチャーだが、足場が悪そうな所は補強されていたり、ロープが設置されていたり。冒険心をくすぐる感じが良い。放送では、2人のトークだけで、山や岩を登ったり、下ったりして、進んでいく様子を聞いてもらった。このサイトでは、それらを写真で紹介する。
ジャジャーン!到着!!とならないのが、桑ノ木の滝の特徴の一つでもある。そこに滝があるのはわかっているが、岩の向こうにあるという位置関係の場所。滝を正面に見るには、岩に上る必要があるのだ。最後のアドベンチャーは、大岩登り。女子2人は、足元に注意しながら、登っていく。「大きい!!」感激し、滝からパワーをもらう。マイナスイオンもいっぱい浴びている。
日本の滝100選
環境庁(現・環境省)と林野庁の後援のもと、緑の文明学会、グリーンルネッサンス、緑の地球防衛基金の3団体が、森林浴の森100選に続く、グリーンキャンペーンの一環として企画・選定。日本全国から34万1292通、527滝の応募があった。「日本百名滝」や「日本百名瀑」とも。
和歌山県では、那智の滝(那智勝浦町)、八草の滝(白浜町)、桑ノ木の滝(新宮市)の3か所が認定されている。
- 和歌山、低山登山を楽しむ旅
- 垢離場をめぐり、熊野本宮大社を訪ねる旅