北山、唯一の村で唯一を楽しむ旅

【飛び地の村】

和歌山市から車でおよそ3時間半。道路の改良整備が進み、時間的にずいぶん近く、走りやすくなったものの、このくらいの時間はかかる。しかし、そこに行けば秘境の村の大自然が迎えてくれる。今回の旅は、伊舞なおみさん(写真右)と覚道沙恵子さんという初めてのコンビで、全国唯一の飛び地の村、北山村へ。伊舞さんは、2019年4月「有田から北山、“秘境の道の駅”全部行く旅」(三浦ちあき&伊舞なおみ)以来の北山村訪問だが、覚道さんは、この番組に限らず、初めての訪問という。早起きをして、日帰り弾丸旅を敢行した。覚道さんの旅は3年半ぶり3回目。道の駅おくとろを拠点に、“ここだけ”を楽しむ。

北山村へ来たぞ!

北山村へ来たぞ!


☆番組は、ここから聞くことができます。

訪れたのは初めてだが、花粉症対策に北山村のじゃばら製品を愛用しているという覚道さん。この旅でも、「じゃばら製品を買って帰る」と冒頭から楽しみな様子。そんな様々な加工品を生み出すじゃばらの木が道の駅にはある。観光客に見てもらおうと植えられているのだ。この時期は、葉と同じ濃い緑色の小さな実ができていた。この実が、これから徐々に大きくなり、やがて黄色く色づく。興味津々の様子で女子2人は説明を読んでいる。11月頃という収穫期にも来てみたい。
じゃばらの木を前に

じゃばらの木を前に

じゃばらの小さな青い実

じゃばらの小さな青い実

【筏下り】

道の駅おくとろは、山に囲まれている。実際には、山の中を流れる北山川と、並行して国道があり、国道沿いに道の駅がある。「筏下り」と染め抜かれたたくさんの幟がはためいている。そして、空は晴れている。実は、旅ロケの数日前、県南部、山間部を中心に大雨が降り、その影響で、ロケ前日まで、筏下りは欠航となっていた。この日の天気予報は曇り時々雨。しかし、川の水が濁っていないと聞いて、旅を決行した。正解だった。天気は良い方に外れた。

筏下りの幟がたくさん

筏下りの幟がたくさん

“ここだけ”体験の「観光筏下り」。かつて、切り出した木材を筏に組んで、筏師が、北山川・熊野川を下り、新宮まで運んでいた。およそ600年の歴史があるという筏流し。そして、この新宮とのつながりの大きさが、飛び地の村、北山村が誕生した。その後、ダムの建設で筏流しは廃れる。一時期、観光用に実施されていた観光筏もさらなるダムの建設で終わり、木材の輸送手段は完全に車に変わった。現在の観光筏下りは、1979年に復活したもの。2年前に40周年を迎え、通常70分のコースを2時間かけてじっくりと紹介しながら下り、途中、筏の上で昼食をとることができるという特別便も始まったが、新型コロナウイルスの影響で、去年から、通常運航のみとなっている。筏下りのシーズンは、毎年5月から9月まで。去年は、5月・6月の運航が取りやめになった。今年は無事、5月から運航されている。
筏下りへ準備万端

筏下りへ準備万端

筏下り専用バスに乗車

筏下り専用バスに乗車

筏下りのために着替えたのがこの姿だ。ダイビングでもしようかという全身ウォータースーツの覚道さんに対し、檜の笠はそれらしいものの、その他は普段着のような伊舞さん。今回の取材(旅)に際し、筏下り経験者のひげDが事前に、下半身を中心に濡れるから、水着の着用と上半身はTシャツなど濡れてもいい格好と、着替えを準備し、さらに履き物はサンダル系をと連絡してあった。この身支度の差がどう影響するのかはのちほど。観光筏下りは、北山村観光センターに予約し(完全予約制)、現地で受付を済ませ、道の駅から専用のバスで送迎される。
バス停から北山川へ

バス停から北山川へ

北山川には筏が待機

北山川には筏が待機

筏の出発地は音乗(おとのり)。バス停から北山川まで、階段を降りていく。水音が大きくなり、川が見えてくると、岩場の向こう側に筏と、そろいの笠&はっぴ姿の筏師の姿が見えてくる。全員マスクをしている。新型コロナウイルス対策だ。乗船客もマスクの着用は必須だから。
筏師が説明を

筏師が説明を

筏に乗船

筏に乗船

乗船客は筏の前に整列し、筏師から説明と注意を聞き、順に乗船する。筏には、縦一列に乗る。筏の両サイドには金属の手すりがあり、中央には木のベンチがある。手すりには、ペットボトルを吊す用のホルダーが付いている。熱中症対策として、ペットボトルドリンクは持参して大丈夫だ。急流では、手すりを持って立ち、流れの緩やかなところではベンチに座る。全員が乗船し、ライフジャケットの装着が済むと、静かに筏がスタートする。女子旅チームは先頭筏に乗せてもらった。
いきなりの急流へ

いきなりの急流へ

急流を行く筏

急流を行く筏

スタートして、1分半で最初の急流がやってくる。体感的には、スタートしてすぐ。この時点で、乗船客はほぼ濡れる。特に先頭の筏では、下半身を中心にずぶ濡れ。先頭に乗った覚道さんは顔まで水をかぶった。この最初の急流の近くに、写真撮影スポットがある。迫力ある急流を行く筏下りの写真が撮れる。そんな写真が多く出回っているのはこのためだ。結果、筏下りは急流の連続と思われがちだが、そうではない。大自然の中で、急流と緩流を楽しむアトラクションだ。コース中に急流は9か所あるという。
急流での筏師

急流での筏師

岩場すれすれを行く筏

岩場すれすれを行く筏

急流を行く時の筏師の櫂さばきは圧巻だが、緩やかな流れの中での筏下りが穏やかで味わい深い。五感で楽しむ感じだ。水の流れ、鳥の声、風を感じ、水を感じ、筏師の話に耳を傾け、推進力のない筏を動かすために、筏師は終始、筏の上を歩き回り、岩を押し、ロープを引き、櫂を漕ぐ。筏師を目で追うのも楽しい。
筏の上の女子たち

筏の上の女子たち

岩を押す筏師

岩を押す筏師

コースの途中に、筏の縁に腰を掛けて、足を川に浸けられる場所がある。筏の上は、水びたしだから、水着着用でないと、この楽しみは享受できない。また、かかとのあるサンダルやウォーターシューズなら、より安心して、川を楽しめる。
先頭の筏師

先頭の筏師

北山川に足を入れる乗船客

北山川に足を入れる乗船客

川の両岸の景色も様々だ。滝が見えたり、吊り橋の跡が見えたり。この日は、数日前に大雨が降ったことから、流れ込む水の流れが多いと聞いた。吊り橋は、10年前の紀伊半島大水害の増水で流されたという。
吊り橋の跡が見える

吊り橋の跡が見える

滝が見える

滝が見える

筏が進む北山川は、深い緑の水がきれいだ。深いところは水深20メートルほどという。浅いところでは、川底が見えたり、魚が泳いでいるのが見えたりする。鮎やアマゴ、ブラックバスや鯉、それに、うなぎもいるそうだ。
透き通る北山川

透き通る北山川

緩流を行く筏

緩流を行く筏

観光筏下りの終点は小松(こまつ)。1時間10分のスーパーアトラクションを終えて、下船した女子はまだ興奮気味。伊舞さんは、乗船時の震動が残っているのか、足がガクガクしていると話した。
筏下りを満喫し下船

筏下りを満喫し下船

接岸した筏

接岸した筏

三重県出身で、筏師になって13年という番矢誠(ばんや・まこと)さんに話を聞いた。背中には、「筏」の1文字。これが格好いい。筏は、1基およそ1トンあり、1乗(のり)=1編成は7つの筏が連結されている。全長およそ30メートル。番矢さんは、シーズンオフに筏を作る唯一の人。筏の寿命は3年ほど。お客さんが喜んでくれるのがやりがいにつながるという。新型コロナウイルス対策をして運航しているので、ぜひ、体験しに来てほしいと話していた。オススメだ。
筏師の番矢誠さんと

筏師の番矢誠さんと

筏師の後姿

筏師の後姿

筏下りの終点から、階段を上って、送迎バスの駐車場へ(女子旅チームは取材のため、バスは利用せず)。すると、クレーンが動き始め、解体された筏がリフトアップされてきた。毎日、2便ある筏の運航が終わると、手すりやベンチを取り外し、筏を運び上げるという。覚道さんは「下りっぱなしでどうするのだろう」と思っていたとか。そりゃそうだ。
クレーンが動き始めた

クレーンが動き始めた

筏が上がってきた

筏が上がってきた

【唯一】

観光筏下りを終えて、道の駅に戻ってきた女子たちは、温泉に。道の駅には温泉施設がある。おくとろ温泉。泉質は単純硫黄泉で、源泉温度は30度。広い湯船に、露天風呂もある。源泉樽もあり、この湯の温度がやや低め。温かいと思って入浴し、「冷た~い」と覚道さんが大騒ぎしていたのはこのため。それはともかく、温泉ですっかりのんびり気分。体が温まって、休まった感じがした。景色が良く、リゾート気分も味わえた。

おくとろ温泉

おくとろ温泉

じゃばらの幟

じゃばらの幟

道の駅にはコンビニ兼物産販売所「じゃばら屋」がある。じゃばらのような黄色い幟もはためく。湯上がりに、じゃばらドリンクを飲み、お土産もふんだんに買い込んだ女子たち。道の駅の筏を活用したベンチに腰を下ろし、旅を振り返る。全身ウォータスーツの覚道さんは、目一杯楽しめたと話し、着替えることで対応しようとした伊舞さんは、スニーカーの替えを持ってきておらず、筏下りが終わってから、ビーチサンダルを買っていた。そう、ここにはビーチサンダルも販売されている。筏下りの前に買うのがオススメ(当たり前)だけどね。
コンビニ兼物産販売所

コンビニ兼物産販売所

湯上がりの女子2人

湯上がりの女子2人

道の駅おくとろは色々な施設がそろっている。宿もあり、レストランもある。女子たちも、ここで昼食を食べた。檜の笠は売店ではなく、筏下りの受け付けがある観光センターで買い求めることができる。ここには、筏や筏下りに関する展示もある。同じ窓口で、ゲットできるのが、「飛び地の村訪問証明書」だ。「下さい」といえば無料でもらえる。ただ、言わないともらえないから、知っているかどうかが大きい。筏下りや売店を利用しなくても、これはもらえる。日付入り。“ここだけ”、唯一の一番は「飛び地」だから。
飛び地の村訪問証明書

飛び地の村訪問証明書

記念撮影

記念撮影

放送では紹介しなかったが、国道169号バイパス工事=奥瀞(おくとろ)道路Ⅲ期工事が進んでいた。北山川を渡る道路が作られつつあったのに驚いた。これが開通すれば、また、北山村が近くなる。楽しみだ。
奥瀞道路Ⅲ期工事

奥瀞道路Ⅲ期工事

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