【大塔村】
大塔村(おおとうむら)はかつて和歌山県にあった村。2005年5月に、龍神村・中辺路町・本宮町とともに田辺市に合併し、現在の田辺市となった。今回は旧大塔村=田辺市大塔エリアを旅する。旅女子は、伊舞なおみさんと黒川綾香さん(写真右)。出発地は、国道311号沿いにある道の駅ふるさとセンター大塔。あまり知られていないが、建物の裏手に木のベンチがある。清流・富田川(とんだがわ)と新緑の山々が正面に見える。旅をしたのは、ゴールデンウィーク開けすぐの、初夏の陽ざしがまぶしく、汗ばむ陽気の快晴の一日。その後、記録的に早く梅雨入りするなど思ってもいなかったころだ。
道の駅のベンチから
☆番組は、ここから聞くことができます。
このコンビでの旅は2回め。和歌山放送に旅部を作ったと言い張る2人。初回は今年1月「
有田・日高、わかやまジビエとミニ鉄道を楽しむ旅」。
2人の前には新緑の山々
2人の前には富田川
新緑もさることながら、川底まで見える富田川の美しい流れに誘われて、水辺に降りてきた。道の駅のベンチの前に川へ降りる階段があるのだ。水に触りたい!そんなわけで、手を浸けてみた。冷たい!でも気持ちいい!川面を渡る風も心地よく、これからの季節には最適の場所といえる。夏は川遊びも良いに違いない。
川辺に降りてきた
道の駅の案内マップ前で
【赤木渓水郷】
道の駅から富田川沿いに国道311号を下り、鮎川(あゆかわ)新橋で富田川を渡り、田辺市大塔行政局=旧大塔村役場前を通って、県道を進むと、赤木渓水郷(あかぎだにすいごう)がある。流しそうめんを楽しめる場所だ。道の駅から車で10分足らず。駐車場に車を停めて入っていくと、「奥に行って下さい」と言われ、緑の中を歩いていく。池や川があり、魚が泳ぐ。徐々に水音が大きくなってくる。
赤木渓水郷
赤木渓水郷の中を歩く
なんと、滝があるじゃないか。伊舞さんが「ナイヤガラ」と表したのもわかる気がする。なかなかの水量で、流れも速い。この滝をバックに流しそうめんを楽しめる趣向のようだ。女子2人は食べる気満々で席に着く。すると、「鮎も焼きますか」と尋ねられた。「いいですね」「じゃぁ、釣ってきて」「えっ?」そんなやりとりが繰り広げられた。自分で釣らなくても食べることはできるが、そんなことができるならばと、隣の池に向かう。
滝がある!
流しそうめんのロケーション
厳密にはアユ釣りではなく、アユ掛け。エサを使わず、アユを引っ掛けるのだ。おじさんから教えられたのは「池に竿を伸ばし、おもりと針を沈めて、アユの群れが上を通ったら、さっと引き上げる」ということだけ。こんな風にとあっさりアユを引っ掛けたおじさんの技に思わず拍手。アユは群れを作るほどたくさんいるのは見えている。できるのかなぁ、そんなことを言いながら、女子2人は竿を借りて、それぞれにおもりと針を沈めた。
アユ掛け用の池
アユ掛けを教わる
アユの群れが来たので竿を上げる。「やったぁ」と黒川さん。スタッフが対応できないほどの速さで、アユをゲット。この女子スゴイぞ。しかも、アユはなかなかの大物だったりする。システムとしては、アユの塩焼きを注文すると、おじさんがその場で焼いてくれる。アユ掛けはおまけのアトラクションというところ。してもしなくても料金は同じ。だったら自分で釣ったのを食べたいよね。
速攻釣りあげる黒川さん
釣り上げたアユ
そうそう、伊舞さんは、アユ掛けをじっくり楽しんでいた。なかなかうまくいかなかったとも言う。余談だが、思いのほか黒川さんが早くに釣り上げたことから、スタッフはバタバタ状態。すっかり余裕をなくし、もう1回やってもらう発想にも至らず、伊舞さんをフォローすることもできず…伊舞さんのアユ掛け写真を誰も撮っていなかった。すみません。
その場でアユを塩焼きに
鉄串を刺し、備長炭で焼く
釣り上げた(引っ掛けた)アユは、おじさんが、その場で、水洗いし、鉄串を刺し、塩をふって、備長炭で焼いてくれる。身を乗り出して、焼けていく様子を眺める女子たち。徐々に焼き色が付き、おいしそうになっていく。
身を乗り出す女子2人
焦げ目がついてきた
改めて、流しそうめんのテーブルへ。丸いテーブルには、二重に水が張られている。外側は円を描くように水が流れ、内側は水が滴っている。もちろん、水は冷たい。中央にゆで上がったそうめんがざるで置かれ、そこから各自が好きなだけ取って、流水に流す。回ってきたそうめんをすくい上げて、薬味とともに食べるというものだ。焼きあがったアユの塩焼きもやってきた。
流しそうめんテーブル
アユの塩焼き登場
流しそうめんが冷たくておいしい。量もたっぷりとある。アユの塩焼きは、まるかぶり。皮はパリパリ、身はプリップリ。直前まで泳いでいたのだから新鮮さはこの上ない。絶品だ!
流しそうめん
アユを丸かぶり
天丼とめはりずしも注文する。調理担当は店主の赤木伸至(あかぎ・のぶゆき)さん。どれもこれもおいしい。「幸せな時間」と女子たち。
天丼
めはりずし
店主の奥様の赤木定子(あかぎ・さだこ)さんに話を聞いた。ここで38年間営業しているという。それ以前は大手観光業者が営業していたのだとか。庭園を見ながらの流しそうめんは、景色や環境がおいしさを増すのだとか。確かに。ちなみに、アユ掛けは、教えを素直に聞くことができる子どもの方が成功率が高いらしい。赤木渓水郷は、4月下旬から9月末までの夏季限定の営業だが、期間中は無休とのこと。予約は受け付けていないという。ますます行きやすい。いいところを見つけた。
店主の奥様、赤木定子さん
赤木定子さんと
【不思議発見】
新緑の中をドライブ。やわらかな緑が目に優しく、それだけで癒される。そんな中、鮎川地区の小川(こがわ)という場所に、小さな屋根付きベンチと碑のようなものがある。「餅搗(つ)かぬ里」とある。実は、スタート地点の道の駅の観光案内マップで、伊舞さんが見つけ、気になっていた場所だったりする。説明書きは、100年ほど前の新聞記事の転写と放送では紹介したが、正確には1935年の記事。読んでみる。大塔の名の由来にもなっている後醍醐天皇(ごだいごてんのう)の皇子、大塔宮護良親王(おおとうのみや・もりよししんのう)の話だ。そばに親王の碑もある。
餅つかぬ里って?
餅つかぬ里
要約すると、ある年の暮れ、幕府軍に追われ、落ちのびた大塔宮護良親王とその一行がこの地を訪れた時、空腹から村人に食べ物を求めたが、拒絶される。「落ち人に食を与えるな」という令に従ったまでだが、その後、村人たちは、一行が宮さまたちだと知り、餅があったのに差し上げなかったことを悔やみ、非礼を詫びる意味から、以後、一切、正月に餅をつかないことにした。時は流れ1935年、京都で、大塔宮の没後600年の法要が営まれた際に、村の代表が参列し、600個の餅を供え、昔の非礼を詫び、その後、正月の餅をつくようになったという話。スゴイな。
休憩所がある
大塔宮親王の碑
次に見つけたのは、木製の謎のオブジェ。離れて見ると、釣り人のように見える。目の前に川が流れているので、アユ釣りと推測できなくはないが、魚が大きい。場所は、「富里(とみさと)温泉 乙女の湯」近くの県道脇。何の説明もない。女子たちはあたりを歩き回って手掛かりを探したが見つからなかった。面白すぎる。
謎のオブジェ
手掛かりを探す女子たち
田辺市大塔行政局に聞いてみた。20~30年ほど前(平成に入ってからという話)に、旧大塔村が広い意味で観光PRのために作った「アユ釣りの像」らしい。大きすぎる魚はやはり「アユ」だった。詳しい資料はすでにないとのことだが、有名な作家などの作品ではなく、また、当時から説明書きの類はなかったらしい。
魚らしきものが大きい
真似してみる
目の前を流れる清流は日置川(ひきがわ)。大塔エリアには、富田川と日置川の2つの二級河川が流れている。
新緑と日置川と
番組では紹介しなかったが、日置川の向こうに富里ゲートボール場という看板が見えた。かなり大きい施設のようだったので、行ってみた。立派なコートだと知る。
富里ゲートボール場へ
富里ゲートボール場
「富里温泉 乙女の湯」は日帰り温泉施設。泉質は、アルカリ性単純温泉で、源泉温度は28度、湧出量は毎分680リットルと豊富だ。だが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、休館していて、再開は未定という。知ってはいたが、乙女の湯の近くは、旧富里中学校の跡地で、交流施設などもあるため、先ほどの謎のオブジェの手がかりを求め立ち寄った。その場では知る人はいなかった。
乙女の湯休館中
乙女の湯休館中
隣の春日神社に参拝した。
富里中学校跡地の碑
春日神社に参拝
【安川渓谷】
安川渓谷(やすかわけいこく)に向かっていたのだ。餅つかぬ里やアユ釣りのオブジェ、それに、乙女の湯はその途中で、赤木渓水郷から乙女の湯まで車で15分、乙女の湯から安川渓谷まで車で15分というところ。日置川の支流の安川の上流域になる。秘境にやってきたぞという感じ。駐車場ということではないが、車が数台停められるスペースがあり、安川渓谷トレッキングマップがある。
安川渓谷へ
安川トンネルを行く
車を降りて、トンネルを抜けると、安川渓谷入口の案内板がある。この渓流を散策するには本格的なトレッキングになる(つまり、ガイドなしに女子旅チームでは無理)と聞いていた。実際、現地では「滑落注意」という看板も目にした。「熊出没注意」も気になるところだが、眼下にすごくきれいな水の流れ、渓谷があり、降りられそうだったので、水辺まで行ってみることにした。
安川渓谷入口で
道路から渓谷を見下ろす
最近の言葉でいうと「水が透明すぎる」ということになる。水に手を浸けてみて、その透明さはより確かなものになった。とっても冷たい。しばし佇むチーム女子旅。
岩場に腰を下ろす女子
透明すぎる川
癒されるというか、普段にはない良いものをたっぷりと充電できた感じがする。トレッキングをしなくても十分に感動する。安川渓谷は、和歌山県の「水の国わかやま」キャンペーンでも紹介されている代表地の一つで、ネイチャーフォトグラファーの内山りゅうさんの写真でも知られる、とにかく水のきれいな場所。ちなみに、安川渓谷から、さらに安川をさかのぼっていくと田辺市本宮町に出る。そういう位置関係の場所。Google Mapによれば、安川渓谷入口から熊野本宮大社まで車で1時間ほどらしい(ただし、現在、一部通行止め区間がある)。
安川渓谷
安川渓谷
【乙女を磨く】
最後は、平瀬(ひらせ)地区。大塔歴史民俗資料館前の国道沿いに乙女の寝顔・展望ポイントがある。案内看板はあるが、何もない。単なる道端だ。そこから南側を見ると、正面の山の頂上付近の稜線が、女性の横顔、乙女の寝顔に見えるというのだ。「見える見える、乙女が寝ている」と女子たち。標高894メートルの半作嶺(はんさみね)だ。
乙女の寝顔を見つけた
展望ポイントから
歴史民俗資料館(この日は休館していた)の駐車場に観光案内マップがあったので、それを見ながら旅を振り返った。
観光案内マップ前で
旅はここまでだが、道中何度も見かけた「乙女のしずく」の案内看板が気になり、訪ねてみた。といっても見つけられなかった。「乙女のしずく」は、安川流域の湧き水のようで、この看板の近くらしいが、水源を見つけることはできなかった。「枯れてしまったのかも」などといいつつ、その場を後にした。のちに、田辺市大塔行政局に確認したところ「湧いている」ということだったので、「見つけられなかった」が正しいのだろう。機会を見つけて、改めて探してみたい。
乙女のしずくを探す
乙女のしずくの看板
「乙女の湯」に入り、「乙女のしずく」を味わうことができていたら、今回の旅のタイトルは「乙女を磨く旅」になっていたかもしれない。女子たちには、それぞれの生活の中で「乙女磨き」をしてもらうことにしよう。
「乙女」について
辞書で調べてみると、「乙女」とは、若い女性、穢れを知らない女性などとある。もとは、「おとこ」に対する言葉だったらしい。番組では、「女子」と同じく、広い意味で使用。
関連リンク
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