紀三井寺緑道を歩く旅

【 紀三井寺 】

2020年に、開創1250年を迎えた和歌山市の紀三井寺(きみいでら)。境内には寺名の由来となったとされる3つの井戸があり、水が涸れることはないという。西国三十三所観音霊場の第2番札所で、桜の開花宣言の基準となるソメイヨシノの標本木があることでも知られている。今回の旅は、紀三井寺参拝から始まる。旅女子は、三浦ちあきさん(写真右)と伊舞なおみさん。このコンビは、なんと22回目。放送4回に1回以上という出演回数が実績となっている抜群の安定感とともに、珍道中の予感がするのはなぜだろう。

紀三井寺前で

紀三井寺前で

☆番組は、ここから聞くことができます。

紀三井寺に参拝する王道としては、参道の231段の石段を上る。2022年春、バリアフリー化の一環で、ケーブルカーを敷設、その山上駅から境内までのエレベーターとともに、これまで参拝したいと思っても、石段を上ることが困難だった高齢者や車いす利用者などに朗報となった。「これからは楽に上れる」とか言ってる足腰がしっかりしている方々、あなたたちのためではないことを心に留め置いてほしい。無論、誰が乗っても咎められるものではない。ただ、この石段は、結縁厄除坂という名の通り、上ることに御利益がある。
楼門をくぐり石段を前に

楼門をくぐり石段を前に

紀三井寺結縁厄除坂

紀三井寺結縁厄除坂

この石段を駆け上がり、タイムを競う大会がある「紀三井寺福開き速駈(はやがけ)詣り」といい、2018年から毎年、成人の日に行われている。和歌山市出身の元陸上五輪選手、青戸慎司(あおと・しんじ)さんの21.9秒という記録がある。その年の男女の優勝者は、速駈王と速駈姫の称号を得て、紀三井寺の行事に参加する。三浦ちあきさんは、別の番組の企画で、今年チャレンジし、1分21.35秒だったとか。この日の三浦・伊舞コンビは、駆け上がることはしなかったが、休憩なしで上り、3分10秒ほどだった。
参道の石段を上る

参道の石段を上る

参道の石段を上る

参道の石段を上る

石段を上りきって振り返ると、上ってきた石段の上に、絶景が広がっている。そして、景色とともに、風が心地よい。境内には広場があり、和歌浦の眺望をより広い視界で楽しめる。達成感、満足感に浸っている女子たちだが、旅は、まだこれから。
上りきって振り返る

上りきって振り返る

和歌浦一帯を一望

和歌浦一帯を一望

女子2人は、本堂に参拝し、旅の安全などを祈願した。そして、放送には登場しなかったが、前田泰道(まえだ・たいどう)貫主にもごあいさつした。これで、旅の成功は間違いない。
紀三井寺に参拝

紀三井寺に参拝

前田泰道貫主と

前田泰道貫主と

【 緑道 パート1 】

紀三井寺の石段の下から参道を戻り、JR紀勢本線の線路を渡ると「紀三井寺公園緑道入り口」と書かれたきいちゃんのイラスト付き看板がある。国道42号側からだと、国体道路との紀三井寺交差点から、紀三井寺方面へ少し進むと正面にこの看板が見える。そう、今回は、この緑道、約3キロを歩く。入り口近くには、緑道のマップがあり、途中に、陸上競技場や野球場があることがわかる。かつての市電の路線図を併せて考えると、緑道区間に、浜の宮と琴の浦の停留所がありそうだ。すでに場所は分からない。

緑道、和歌山側案内

緑道、和歌山側案内

緑道マップを前に

緑道マップを前に

この緑道は、かつて、和歌山市と海南市、和歌山市駅と海南駅を結んでいた路面電車跡だったりする。そのうち、専用線だったこの区間が緑道(歩行者・自転車専用道)となった。直線部分も多い。一方で、かつての面影、駅や線路などは全くない。そういった表示もない。だから、教えられないと気がつかない。教えられても、市電が廃止されたのが黒潮国体前、1971年だから、すでに半世紀以上が経過し、ピンとこない人も多い。散策道やウォーキング道というより、すっかり生活道として定着している。
大人用健康器具

大人用健康器具

いろんな器具(遊具?)

いろんな器具(遊具?)

緑道は、遊歩道ではなく、歩道でもなく、分類的には公園。だから、健康器具的な遊具があったり、ユニークなオブジェがあったり。また、木々も多く茂っていて、今の時期は、日差しを遮ってくれている所も多く、ありがたい。ベンチも結構ある。使用禁止と書かれた遊具(器具)も多く、残念な気がした。撤去ではなく、可能なら、ちゃんと整備してほしい。
緑道を歩く

緑道を歩く

ユニークな遊具

ユニークな遊具

今回の女子たちのように、海南方面に向かって歩くと、緑道の右側には、畑などをはさんで国道42号が見え、今どのあたりを歩いているのかを知る手がかりになる。左側には、JR紀勢本線が通っている。複線区間なので、本数も多く、電車との遭遇率は高い。この時、遭遇(通過)したのは、和歌山行きの普通電車だった。そして、電車がかなり近い!女子たちは楽しそうだ。だが、線路は、ずっとに沿っているのではなく、緑道入り口から500メートルあたりを過ぎると、東側へ離れていく。
JR紀勢本線が近い

JR紀勢本線が近い

JR紀勢本線の線路

JR紀勢本線の線路

【 公園 】

緑道入り口からもうすぐ2キロ、亀ノ川(かめのがわ)を渡ると、陸上競技場が見えてきた。大学まで陸上部だったという三浦さんは、競技場を見ただけで、テンションが上がっている。そして、陸上競技場や野球場には、仕事でも、よく来るという三浦さんだが、普段は、車で施設近くまで行くので、緑道付近は初めてだとか。色んなオブジェやモニュメントに興味津々だ。そして、絵画のような、プレートを見つけた。橋杭岩と虹を背景に、先生と子どもたち的なものが描かれ、「BRIDGE OF RAINBOW」とある。黒潮国体開催時に知事で、その後、急逝した大橋正雄(おおはし・まさお)氏の顕彰碑とわかる。

紀三井寺公園のプレート

紀三井寺公園のプレート

大橋正雄元知事の顕彰碑

大橋正雄元知事の顕彰碑

陸上競技場へとのブル直線道路脇にある「デンマーク通り」のプレートも目立つ。2002年、FIFAワールドカップ日韓大会に出場するデンマーク代表チームが、和歌山市でプレキャンプを実施したことを記念して、この通りを「デンマーク通り」と命名した。プレートは、日本語とデンマーク語で「デンマーク通り」と書かれたもので、少し先には、この経緯が記された石碑もあり、サッカーボールもモニュメントの一部となっている。
デンマーク通りプレート

デンマーク通りプレート

デンマーク通りのいわれ

デンマーク通りのいわれ

大きな波と矢印のモニュメント風ものが、野球場前に立っているのも気になる。このオブジェは、黒潮国体の開催を記念して、有田川町出身の建築家、建畠覚造(たてはた・かくぞう)によって建造されたもので、台座の下には当時の品が納められた2つの「タイムカプセル」が埋設されている。
モニュメントと球場

モニュメントと球場

タイムカプセル!?

タイムカプセル!?

陸上競技場の正面玄関前には、2体の木製のきいちゃん像がある。紀の国わかやま国体と紀の国わかやま大会を記念したオブジェで、樹齢140年の紀州杉を活用したチェーンソー・アーティストの城所(きどころ)ケイジさんの作品。国体開催時に設置されていた写真があったので掲載する。設置場所が今と少し違うのがわかる。
陸上競技場の正面玄関前

陸上競技場の正面玄関前

設置当時のきいちゃん

設置当時のきいちゃん

陸上競技場の1階には、紀三井寺公園の管理事務所があり、きいちゃんグッズの販売もしている。きいちゃん「ガチャ」もある。女子旅たちは、ソフトクリームを見つけた。冷たくておいしい!伊舞さんは、きいちゃんが大好きとのことで、早速バッグを買っていた。ガチャもしたい・・・。
きいちゃんグッズ販売中

きいちゃんグッズ販売中

ソフトクリームで小休止

ソフトクリームで小休止

【 緑道2 】

紀三井寺公園の中心施設(陸上競技場・野球場)まわりの散策を終えて、再び、緑道へ。ウォークを再開する。引き続き、様々なオブジェがある。滑り台もある。机や椅子もある。あっ、トンネルがある!

色んなオブジェがある

色んなオブジェがある

滑り台がある

滑り台がある

トンネルの入り口から出口が見えない。トンネル上部の扁額(へんがく)には「鵬雲洞(ほううんどう)」と書かれている。トンネルによくある「○○隧道(ずいどう)」とは違う感じ。調べてみると、標高153メートルの船尾山(ふのおやま)を貫通するトンネルで、長さは約184メートルある。もちろん、路面電車が使っていた(通っていた)トンネルだ。鵬(ほう)は想像上の最強の大きな鳥、おおとりで、雲も相まって、異世界に通じる道という意味か。明治末期の1911年に完成したトンネルで、すでに113年が経つ。2017年には、土木学会・選奨(せんしょう)土木遺産に指定された。
いろんな机・椅子

いろんな机・椅子

和歌山側扁額に「鵬雲洞」

和歌山側扁額に「鵬雲洞」

灯りがあるので真っ暗ではないが、トンネルの中は暗い。慣れない子どもはもとより、大人でもひとりで通るのは恐そうだ。車が来ない大きなトンネルを歩けるのは珍しいと伊舞さん。歩いて行くと、出口の灯りが見えてきた。
トンネルの中を歩く

トンネルの中を歩く

トンネルの中を歩く

トンネルの中を歩く

トンネルを抜けて振り返る。こちら、海南側の扁額には、違った文字がある。読めない。調べてみると「天開圖畫(てんかいとが)」と記されているらしい。「天が描いた素晴らしい絵」という意味で、浜の宮や琴の浦、それに、和歌の浦といった風景の美しさを讃えているのだとか。そして、トンネルを抜けるとまもなく緑道は終点となる。市の境界にある「海南市」のプレートの手前にあり、緑道は全行程、和歌山市だと知った。
トンネルを出て振り返る

トンネルを出て振り返る

緑道、海南側終点間近

緑道、海南側終点間近

【 おまけ 】

今回は、紀三井寺公園の緑道を歩いた。ここはかつての市電の路線跡。とはいえ、当時の面影を残すものはない。そこで、おまけとして、当時、運行されていた車両を。残っているのは、すでに2両しかなく、和歌山市岡山丁(おかやまちょう)、和歌山城公園の南側にある岡(おか)公園と、JR紀勢本線黒江駅に近い海南市黒江(くろえ)の室山(むろやま)公園に、1両ずつ展示・公開されている。岡公園の車両は、金属の柵で囲まれている。この車両については、2023年2月の三浦・伊舞の今回と同じコンビの「和歌山、吉宗を感じながら歩く旅」で紹介した。室山公園の車両には、柵などはなく、そのまま置かれている。一時期、集会所に使われていたそうで、その名残か、車両の出入口に階段が設置されている。どちらも誰でも見学できるので、関心のある方は訪ねてみて。

岡公園の市電の車両

岡公園の市電の車両

室山公園の市電の車両

室山公園の市電の車両


次回の放送は、8月3日です。高校野球・和歌山大会の全試合を実況放送する特別番組があるため、7月は最終週ではなく、翌週となります。お間違えなく。そして、次回の番組では、新しい旅女子が登場します。


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