串本・那智勝浦、ロケット観光を予習する旅

【 橋杭岩 】

和歌山県内からロケットが打ち上げられるなら「見たい!」でしょ。ゴールが見えない延期連続の中、「具体的日時の発表」は突然やってきた。随分待たされた感はあるものの「見たい!」気持ちは変わらない。そこで、番組では、初号機発射までの間に皆さんに代わって予習をすることにした。旅女子は三浦ちあきさん(写真右)と柳橋さやかさん。公式見学場とはどんなところなのか、見学場以外ではどこから見えるのか、ロケット土産・ロケット関連グッズにはどんなものがあり、どこで買えるのかなど、今知りたい情報を求めて、串本町と那智勝浦町をめぐる。旅のスタートは、ここもビュー・スポットになること間違いない橋杭岩!訪れた日は、天気も良く、海もキラキラで透き通っていて、寒さも和らいだ女子旅日和の一日だった。

橋杭岩から旅がスタート

橋杭岩から旅がスタート

☆番組は、ここから聞くことができます。

「2019年3月、串本町にロケット打ち上げ場が建設されることが決まり、2021年度にも最初のロケットが打ち上げられる!」このニュースは、和歌山県民にとって、衝撃的な感動をもって迎えられた。しかし、新型コロナウイルスの世界的感染爆発や戦争の勃発などあり、発射予定は延期が相次ぎ、トーンダウンしていたところへ、突然、具体的な最初のロケットの発射日程が発表された。「打ち上げは、3月9日土曜日、午前11時から正午までのあいだ。ただし、悪天候などにより延期の場合があり、予備期間は3月31日まで」という内容。そして、発表の翌日に販売が開始された公式見学場(有料)の5千人分のチケットは1日半で完売となり、人気や関心の高さが明らかになった。

事業者は「スペースワン」、打ち上げスポット(正式には「射場(しゃじょう)」という)は「スペースポート紀伊(きい)」と命名された。場所は「串本町」といわれ、これは、「本州最南端」とも結びついて、なんとなく納得感がある。間違いではないが、串本町と那智勝浦町の境にあるというのが正確だ。詳しくいえば、串本町田原(たわら)と那智勝浦町浦神(うらがみ)にまたがる浦神半島の上、山の上の小さな谷あいの一角にある。そして、スペースポート紀伊には、見学スペースがないので、この場所をはさんで、串本側と那智勝浦町側に、それぞれ公式見学場が設けられた。ともに、スペースポート紀伊から2キロほどの距離にある。近くの国道42号からは、スペースポート紀伊へとのびる道路と白い建物が見える。この建物は、総合司令塔らしい。

【 旧浦神小学校 】

2013年に学校の統廃合で廃校になった那智勝浦町の旧浦神小学校。ここが那智勝浦町側の公式見学場だ。現在は、体育館の撤去工事中で、校舎まわりには入れない状態。なので、那智勝浦町にお願いし、ロケット見学用に整備された校舎の屋上に、特別に入らせてもらった。番組を聞いた皆さんが、同じことを体験できることが望ましいとして、なるべく「特別に」を排除しているが、今回は特別。見学者も当日ここに来ると聞いて、一足早く入れてもらった。女子2人は、促されるまま、校舎の外階段を上り、屋上へ。すると、ロケットがあった!

このロケットは、スペースポート紀伊から実際に打ち上げられるカイロスの模型で、校舎と体育館の間に、建てられている。地元の勝浦ライオンズクラブが、去年(2023年)秋、結成60周年を記念して製作し、町に寄贈したもの。ライトアップもできるという。モニュメントの大きさは、14・5メートル。カイロスは18メートルなので、やや小ぶりだが、大体の大きさを実感できる。このモニュメントの先端部が、校舎の屋上よりも高く、顔を出している状態。女子2人は、ロケットの方に駆け寄り、屋上から、中庭を見下ろし、モニュメントの全景を見た。白いまっすぐなロケットで、すごく大きい感はない。これが宇宙に行くのか…と想像を膨らませ、早くも感動している。

ロケットのモニュメント

ロケットのモニュメント

ロケットのモニュメント

ロケットのモニュメント

旧浦神小学校からスペースポート紀伊の建物は何も見えない。距離は大体2キロほど離れている。ロケットのモニュメントを背に、南西と西南西の間くらいの方角が注目ポイント。海をはさんだ山の上から上空に高くに上っていくことになる。ただ、逆光方向になることが分かった。

那智勝浦町・観光企画課の青木徳之(あおき・のりゆき)さんに、工事とモニュメントについて聞いた。工事は、体育館の撤去と駐車場の整備で、今年度いっぱいかかるらしい。計画通りに進められているが、打ち上げには間に合わない。日時が突然発表されたからだが、少し残念だ。モニュメントは、校舎と体育館の間に立っているので、串本方面からは校舎が、新宮方面からは体育館が邪魔になって、先端が見えるだけだったが、体育館の撤去が完了すれば、新宮方面からは国道42号から全景が見えるようになるらしい。なお、校舎屋上の改修は完了していて、フェンスと床面が真新しかった。公式見学場としては、校舎の屋上と、学校そばの小さな漁港から見学することになるという。

旧浦神小学校屋上から

旧浦神小学校屋上から

那智勝浦町の青木さんと

那智勝浦町の青木さんと

【 田原海水浴場 】

串本町側の公式見学場は、田原海水浴場。「田原」と書いて「たわら」と読む。ここからも、スペースポート紀伊の建物は何一つ見えない。海岸や砂浜が広く、砂浜へ下りていくところに石畳の低い石段があり、ここに座ることが可能だ。スペースポート紀伊の方角は、北北東。海に背を向けて立って、山の上を見るかたち。写真の女子は海側を向いているので、この後ろにある山の上から、女子が示している方向に向かって打ち上げられる(はず)。

2か所ある公式見学場では、ともに、地元食材を使った屋台や地元の物産販売、ロケットや宇宙関連のグッズの販売などが行われるほか、ステージイベントもあるとか。そして、ロケットの打ち上げを見る。楽しいことだらけだが、公式見学場はどちらも海が近いので、事故はないように注意してほしい。また、ゴミなどはなるべく出さないようにしたい。どんな景色が見られるか、どんな音が聞こえるか、どんな気持ちになるのか。女子たちは、「見たいなあ」と言いながら、拍手はしそう、泣いちゃうかも…など、妄想して楽しんだ。

田原海水浴場

田原海水浴場

田原海水浴場で

田原海水浴場で

【 南紀串本観光協会 】

JR串本駅に、南紀串本観光協会がある。事務局長の宇井晋介(うい・しんすけ)さんを訪ねた。宇井さんを知る柳橋さんは「海の博士」と言った。これに対して宇井さんは「博士ではないが海好きなのは間違いない」と笑顔だ。今回は海ではなくロケットの話だ。まず、今の気持ちを聞いたところ「ホットしている」と言った。延期が続いたから、ゴールの見えないランナーの気持ちみたいだったと。確かに。そして、観光協会では、ロケットガイド(ロケットや宇宙、スペースワン、スペースポート紀伊などの話をする)や、組み立て式ミニロケットの打ち上げなどの事業を行っていて、修学旅行などと結びつけたいと話した。また、民間でつくる「ロケット応援団」にも参加して、幟を販売して、事業者などに立ててもらい、町内の機運を盛り上げて行く活動などを行っているとした。

ロケット応援幟

ロケット応援幟

組み立て式ロケット模型

組み立て式ロケット模型

一方、具体的な発表がなされてからロケット関連の問い合わせが増えたという。公式見学場以外で「どこがよく見えるか」の問い合わせも多いらしいが、観光協会が特定の場所を推すと、そこが大混雑することになるので、明言はしていないという。実は、この日も、複数のテレビ局が、打ち上げを撮影するための場所を探す、ロケハンに来ていたらしい。プロも足で探しているのだ。ということを分かった上で、地図を見ながら聞いてみると、ピンスポット的ではなく、広範囲で見えるという情報を得た。というのは、ロケットは空高く上っていくので「潮岬より東側の海岸部なら、スペースポート紀伊の方角を見れば、どこからでも見えるんじゃないか」という情報を得た。
ロケットタオル

ロケットタオル

観光協会の宇井さんと

観光協会の宇井さんと

観光協会の事務所には、ロケット関連グッズがたくさんある。販売もしている。ここにあるのは、観光協会が関わったものだけという。実際には、もっと色々あるらしい。漫画家の小山宙哉(こやま・ちゅうや)さんの「宇宙兄弟」と「串本町」がコラボしていて、ロゴ入り宇宙服を着用した姿や橋杭岩上空をロケットが飛ぶ絵を提供してくれている。これらがプリントされた商品も多い。イチオシは、タオル。ロケットが飛び立ち、噴煙と波で「串本」と描き出されるオリジナルデザインだ。女子2人も気に入った様子。ロケット関連グッズは、観光協会のほか、道の駅くしもと橋杭岩や潮岬観光タワーなど観光施設、ホテル、駅などでも販売されている。また、飲食店などでは、それぞれオリジナルのロケット関連メニューやお土産を開発、販売しているところもある。

【 串本儀平 】

創業130年以上の老舗和菓子店「串本儀平(ぎへい)」がロケットとコラボした商品を開発、販売しているというので、本店を訪ねた。工場長(製造部長)の丸山正雄(まるやま・まさお)さんが迎えてくれた。「コラボ」というか「勝手にですよ」と笑った。店内には囲炉裏があり、それを囲んで座れる場所がある。お客さんが待つ場所なのだが、この場所で話をうかがった。名物「うすかわ饅頭」と緑茶をいただいた。うすかわ饅頭は、去年(2023年)、誕生から100年を迎えたとのこと。橋杭岩をモチーフにした甘さ控えめの饅頭として、長く愛されていることをあらためて知った。

うすかわ饅頭と緑茶

うすかわ饅頭と緑茶

ロケット饅頭を手に

ロケット饅頭を手に

串本からロケットが打ち上げられることが発表されてまもなく、ロケットに因んだお菓子を作りたいと思った丸山さんが、試行錯誤を重ね「ロケット饅頭 そらのかけはし」を完成させた。「4年もかかってしまった…」と話しながら「時間をかけた分、良いものができた」と自信ものぞかせた。去年11月11日、1が並んでいるのでロケットのようだと思い、勝手に「ロケットの日」と決めて、この日に発売したといい、初日は、売れ行きが気になって何度も店頭へ見に行ったと話してくれた。そのかいあってか、見た目にかわいく、食べておいしいと人気だ。

「ロケット饅頭」の名の通り、それは、ロケットの形をしている。カイロスというよりは、スペースシャトルに近いかも。全体に丸みを帯びていてかわいい。表面はホワイトチョコレートでコーティングされ白く、中にはたっぷりの黄身餡(きみあん)が詰まっている。ロケット(饅頭)に付いているアイスの棒は、食べやすい工夫とロケットの噴射に見立てているらしい。女子2人も試食し、おいしいを連発する。そして、自分が食べるのはもちろんだが、誰かにプレゼントしたいお菓子、上級者差し入れに最適などの感想が飛び出した。

箱入りのロケット饅頭

箱入りのロケット饅頭

ロケット饅頭と初対面

ロケット饅頭と初対面

製作途中でデザインに迷い、やめようかと思ったこともあったが、職場での「作ろうよ」という声に推され、「ロケットのかたちがわかりやすいのでは」との意見を参考に、工夫を重ね、完成にこぎ着けたという丸山さんの話しに、感動して、三浦さんが涙ぐんでいた。そして、打ち上げに間に合った。販売当初、打ち上げ日時が明らかでなかったため、週末限定の販売だったが、3月9日以降は全店舗(串本の3店舗[本店・橋杭店・桟橋店]と儀平和歌山近鉄店)で、毎日数量限定で販売する予定と聞いた。橋杭岩やロケットなどが描かれた箱に5個入りの商品は2,000円(税込み)。ばら売りもしているという。
串本儀平の丸山工場長と

串本儀平の丸山工場長と

ロケット饅頭そらのかけはし

ロケット饅頭そらのかけはし

【 橋杭岩ふたたび 】

旅を終えて、橋杭岩に戻ってきた。女子2人は、橋杭岩の上を飛ぶロケットに思いをはせる。どんな風に見えるのか、そもそも、どれくらいの時間見えているのかすらも分からない。それは、誰もが同じ。あとは、無事に打ち上げが行われ、見学者がそれを楽しめればいい。そして、ロケット打ち上げは今回がだけではない。これから、始まるのだ。いつか、どこかで、リアルに見てみたい。そんなことを思った。

橋杭岩に戻ってきた

橋杭岩に戻ってきた

発射軌道をサーチライトで

発射軌道をサーチライトで

参考までに、2021年2月、ちょうど3年前に、スペースポート紀伊から、ロケットを打ち上げる方向にサーチライトを照らす催しがあった。その時、サーチライトを橋杭岩から見た(撮った)写真を公開しておく。奇しくも女子2人が示している方角と近かったりする。

※すみません。声が治っていません。(女子旅サポーター・髭白)


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