【夏といえば白浜】
夏といえば「白浜」。これは、和歌山県内の人に限らずよく聞くフレーズだ。出掛けたいけど出掛けにくい今年といえどもそれは同じこと。とはいえ、密にはなりたくない。そんなことから、とっておきのスポットを紹介する。新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の発令などあり、例年より遅れたが、白浜町では、今年も3か所の海水浴場で海開きされ、8月末まで遊泳などが楽しめる。そのひとつ「臨海浦(りんかいうら)海水浴場」から旅が始まる。旅女子は三浦ちあきさんと伊舞なおみさん(写真左)で、7か月ぶり、10回め。少し久しぶりだが、最強コンビは揺るがない。
円月島(えんげつとう)の近く、番所山(ばんしょやま)公園の海岸部に、臨海浦海水浴場はある。白浜町全体で言えば、北の端という場所だ。海沿いを通る「県道34号・白浜温泉線」から、一段低いところに砂浜や海があるので、看板は出ているが道路からは少し見えにくい。このため、隠れ家的スポットとなっていて、大混雑を免れている。砂浜も水もきれいだし。
今度は浜を歩く。「この感触が夏らしい」と伊舞さん。そして、SNS映えする絶景スポットがあるとの情報を得て、キョロキョロ。岩場に向かってみる。
【京都大学水族館】
臨海浦海水浴場のすぐ近く、番所山公園の玄関口に「京都大学」の名まえを冠した「水族館」がある。「あの京都大学?」と三浦さんが言うのも無理はないが、正真正銘の「京都大学」だ。正式名称は「京都大学白浜水族館(Shirahama Aquarium, Kyoto University)」で、実験場から発展したという。今年で創立90年と歴史もある。6年前に耐震改修され、内装などが新しくなっている。
入口ドアの前に立つと自動でゲートが開き、目の前に大きな水槽が現れる。その中をたくさんの魚が泳ぐのが見え、即座にテンションが上がる女子2人。水族館の特徴や成り立ちを飼育展示担当の加藤哲哉(かとう・てつや)さんに聞いた。加藤さんも理学博士だったりする。
展示する約500種の生物はすべて紀南を中心とした、和歌山県近海に生息するもので、その半数以上が無脊椎動物なのだという。そして、蛍光色に光る県の天然記念物「オオガワリギンチャク」もあるという。本当に光っている!
下村脩(しもむら・おさむ)
クラゲから緑色に光るタンパク質(GFP)を発見し、2008年にアメリカの研究者2人と、ノーベル化学賞を共同受賞。紫外線を当てると緑色に光るGFP遺伝子は、他の生物に組み込むことで、特定の細胞の活動を可視化でき、医学や創薬など現在の生命科学分野に欠かせない技術という。1928年・京都府生まれ、2018年没。
オオガワリギンチャク
イソギンチャクの仲間だが体の構造が異なり、蛍光タンパク質を持つ。紀南の海を代表する生き物のひとつで、2015年、和歌山県が天然記念物に指定。かつては海底が黄色く見えるほど生息していたが、最近は減少。地元のダイビング組合では、ダイバーに向けたルールを作るなど保護の動きあり。
【南方熊楠記念館】
番所山公園の森林部へ入って行く。片側交互通行の信号があり、入るとジャングルテイストの急勾配の道路が延びる。ほどなく駐車場が見えてきた。そして、茂る木々の向こうに白い建物が見える。「ずっと気になっていて、来たかった」と伊舞さん。白浜町の花、はまゆうが咲いていた。
今年4月に就任したばかりの高垣誠(たかがき・まこと)館長が迎えてくれた。1965年に建てられた旧館(国の登録有形文化財)と、2017年に増築竣工した新館からなる博物学者で民俗学者の南方熊楠(みなかた・くまぐす)を顕彰する施設。展示も豊富だ。新館は、建築家・小嶋一浩(こじま・かずひろ)氏の設計で、熊楠の研究対象だった粘菌(変形菌)をイメージしたという。曲線が活かされ、アートでユニークなデザインだ。
「中も変わっているね」と伊舞さん、「高級なカフェのよう」と三浦さん。もちろん、ともにほめ言葉だから。常設展示を見学しながら、南方熊楠を身近に感じ、少し知る。粘菌とは何かを知るために、顕微鏡をのぞいて実物を見ることができるコーナーもあった。
屋上に出ることができる。360度、ぐるっと1周を見渡せる。半島の先端の岬にあるので、どの方向にも海が見える感じ。「あっちが白浜」と三浦さん。白良浜越しに町が見える。「あの島はさっきの」臨海浦海水浴場の西の端にある岩のゲート、塔島と洞門を俯瞰できている。いろいろ見えるから、案内プレートもある。目の前すぐに見えないものも。あっちが和歌山市でこっちが四国、その間にはロンドン(イギリス)9,603kmとの案内もある。それぞれに南方熊楠との縁を探ってみるのも面白い。
【番所山公園】
森の中にある南方熊楠記念館は当然として、臨海浦海水浴場や京都大学白浜水族館も広い意味で番所山公園といえそうだ。公園の案内マップを見ると、公園内を縦横無尽に遊歩道が整備されている。そして、様々なロケーションや展望があり、楽しそうだ。女子旅チームは、展望台を目指す。
森を抜け、いつもとは違う円月島を見ながら、展望台へと歩いて行く。なかなかの坂道があり、最後に階段が待っていた。よし登ろう!
汗だくになりつつも、登りきった展望台からの眺めは素晴らしい。記念撮影の背後の白い建物は南方熊楠記念館だったりする。風を感じ、眺めを楽しんだ女子2人は、そこにある「鐘」を鳴らしてみる。これは「恋人の鐘」で、ほかに「再会の鐘」もあるという。次に訪れた時は、こちらを鳴らさなくちゃ。
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