【冬の絶景】
串本町大島の東の端、樫野崎(かしのざき)の断崖に立つ白亜の灯台、樫野埼灯台から今回の旅は始まる。旅女子は、三浦ちあきさんと伊舞なおみさん(写真左)。天気は穏やかな冬晴れ。今回は紀伊半島南部、紀南地方をぐるっと回る長旅の予定。何かが起こる予感がする。
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樫野埼灯台は「日本の灯台の父」と呼ばれるイギリス人、リチャード・ヘンリー・ブラントンが日本で最初に設計し、1870年に初点灯した日本最初の石造灯台であり、日本最初の回転式閃光灯台でもある。今なお現役。来年(2020年)、点灯から150年となる。ちょっとレトロで(三浦さん)、ずっしりとしている(伊舞さん)のもうなづける。そして、この灯台は、らせん階段でデッキ部分に上ることができる。女子2人は当然上る。
断崖、岩礁に波がぶつかっているので、波音がしないわけはない。だが、灯台のデッキに上るまでは、気づかないほど静かだった。そして、展望も開けた。180度では収まらない太平洋が目の前にある。海の色が美しすぎる。展望デッキが完成したのは2002年のことで、この眺めは好評という。それもそのはず、吉野熊野国立公園内だったりする。さらに、樫野埼灯台は古いだけではない。2016年に、光学系機械装置が機械遺産に、2017年には、灯台自体が土木学会選奨土木遺産にそれぞれ認定された。
灯台からの眺めに早くもテンションが上がる女子2人。写真にある三角屋根の建物は灯台に駐在していた技師たちの旧官舎。ここは中に入れるが、訪れた日は休館日だった。今は自動点灯の灯台なので駐在員はいない。灯台の展望デッキは年中無休だが、旧官舎は水曜・木曜は休み。時間は午前9時から午後5時まで。旧官舎も灯台と同じ、リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計で、灯台が何度か改修された一方、旧官舎は当初の佇まいを残しているという。国の登録有形文化財だ。
展望デッキでは、目の前の大海原の絶景に見とれてしまうが、振り向くと、灯台上部、閃光部がまじかにあることに気づく。ただ灯台の内部には残念ながら入れない。
灯台のまわりの公園には散歩道や休憩所があり、スイセンが咲いている。これから1月にかけてスイセンの花が咲き誇る時期を迎える。県内有数のスイセンの名所だ。このスイセンは、灯台を作り、見守ってきたイギリス人技師が、故郷から取り寄せて植えたのが始まりとされる。その後、地元の人たちに愛され、増やされ、守られてきた。
公園に下りてきた女子2人。スイセンの甘い香りがする。満開の頃はどんなだろうか。その頃にも訪れたい。
樫野埼灯台へは、近くの駐車場から少し歩く。トルコ記念館やトルコの雑貨店、飲食店、トルコ軍艦(エルトゥールル号)遭難の慰霊塔などを経ると正面に見えてくる。この通りはエルトゥールル通りというようだ。初めて知った。
【冬の味覚】
紀伊水道や熊野灘では伊勢海老が獲れる。実は和歌山の伊勢海老の水揚げ量は全国3位だったりする。そう、紀南の冬の味覚といえば伊勢海老なのだ。とはいっても高級食材なので、そんなに頻繁には口にできない。と思っていないだろうか。間違ってはいないが、結構リーズナブルに提供しているお店もある。
今回の旅では伊勢海老をいただく。大島漁港に来ると「イセエビ料理」の大きな看板がある。「びっくり伊勢海老」というお店を訪ねた。何がびっくりなのかは聞いてみようと思っていた。えーっと、お店の入口は、どこ? 入口に看板がないからわからないだけ。漁師さんのご自宅がお店だった。
「びっくり伊勢海老」では、メニューはひとつ。ひとり一尾の伊勢海老の酒蒸しと、うどんすき、そして、雑炊、デザートというコースだけ。料理の料金は伊勢海老の重さで決まるシステム(4000円から)。まずは伊勢海老を見せてもらう。店主の野呂勝利(のろ・かつとし)さんは伊勢海老漁師で、自ら獲ってきた伊勢海老が水槽に入れられている。3つの水槽にあわせて200kgぐらいいるかな….と、あっさり言う。生きた伊勢海老をまじかに見るのは初めて、そんな女子の声の中、網ですくい始める店主。すると急に伊勢海老が暴れだす。元気だ。女子は悲鳴を上げる。1回目のびっくりだ。
暗いところでは動きが鈍いという伊勢海老の習性を利用して、2つのすし桶で挟んで運ばれる。野呂さんのアイデアだという。ちなみにここで提供される料理すべてが野呂さんのオリジナルなんだそうだ。お客は客間で料理をいただく。カセットコンロと土鍋がセットされている。コンロに火をつけ、土鍋の蓋を取ると小石が敷き詰められていた。石を入れることにより、焦げ付きにくく、蒸し上りが早いという。
どんな料理なのかと思って見ていると、熱くなっている土鍋に生きた伊勢海老をそのまま投入した。大きな尾びれを使って海老が大暴れ。鍋から飛び出すものもある。女子は悲鳴というより絶叫になっている。
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飛び出した伊勢海老は鍋に戻せばいよい。それはわかっている。でも、生きている(動いている)伊勢海老を手で持てるメンバーは、女子以外のスタッフを含め、誰もいない。
鍋に入れられた海老の動きから目が離せない女子2人。すっかり逃げ腰。立ち上がって逃げようとする三浦さん。笑いが止まらない伊舞さん。爆笑するスタッフ。店主を呼ぶ女子2人。店主はいつものことだと笑っている。そして、鍋に日本酒を注ぐ。
蒸しあがった伊勢海老は真っ赤で、豪華で、おいしそうだ。女子2人は、ほんの少し前まで悲鳴を上げていたのがウソのように笑顔になっている。この変わりようもびっくりだったりする。
蒸し上がった伊勢海老をどうやって食べさせてくれるのかと思っていると、店主が殻から身を取り出してくれた。ごろんと大きな身がお皿に。フォークで食べられる。贅沢すぎる!
新鮮なのは大暴れで実証済み。おいしい。幸せ。このあと、殻や足で出汁をとりつつ、白菜を加えて、まずは、うどんすき。そして、ご飯と溶き玉子で雑炊へと進む。南高梅のはちみつ漬けと、アロエのデザート付き。自身が海老になったんじゃないかと思うほどに堪能した(三浦さん)、アトラクションと料理を同時に楽しんだ(伊舞さん)という感想。ここはおすすめだ。
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- 上富田から中辺路、秋の熊野古道を楽しむ旅
- 冬の九度山で、“食”に導かれる旅