【高野坂】
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の熊野参詣道・中辺路の一部「高野坂(こうやざか)」。田辺市から山中を抜けて熊野本宮大社に参り、熊野川を船で下って熊野速玉大社を訪れ、そこから那智へと向かう海沿いのルートのうちの峠越えが高野坂だ。熊野詣での人々は那智勝浦に入ってから山に向かい、那智の滝と熊野那智大社を見ることになる。
潮の香りの中を潮騒を聞きながら歩くことができる絶景の熊野古道として知られる。今回は広角(ひろつの)側から入り、三輪崎へと抜けた。およそ1.5キロ。熊野古道を歩くのは初めてという女子のために初心者コースを選んだ。スペシャルサポーターに新宮支局の引本孝之さんに同行を頼んだ。
小さな川、逆川を渡ると高野坂の道標があり、上り坂へとさしかかる。
茂る木々の濃さや密度によって、明るくなったり、暗くなったり。足下は、枯れ草や落ち葉で歩きやすく、踏みしめる音が心地よいリズムを刻む。
20分ほどで、見晴らしの良い場所に出る。眼下には王子ヶ浜の御手洗(みたらい)が見え、念仏碑も立っている。
景色の美しさに歓声を挙げる女子。そう、今回の旅では、同様に、「わー」「おー」「うぉー」「あー」など旅女子2人の声が響く場面がたくさんある。
しばらく山道の熊野古道を歩くと「五輪塔(ごりんとう)」への分岐を示す案内板がある。行ってみることにした。
ひっそりと木立の中に立つ五輪塔に手を合わせ、さらに先へと促される。崖の先まで行けるのだ。「海の上」に立っている気分を味わえる場所に出る。ここまで来ないと見られない景色が眼前に広がり、ひととき小休憩。
メインルートに戻り、再び歩き始める。木々のトンネルもあった。
山の中に赤い鳥居が目にとまる。金光稲荷神社とある。日本遺産「鯨とともに生きる」の構成資産だったりする。お参りしておく。
古道には色んな道標がある。建てられた時代ごとに形も色も文字も違う。この道標は新しい。
明治のころまで、捕鯨船や住民に知らせるために鯨を見張っていた場所。鯨山見跡を目指す。ここも日本遺産だ。視界が開け、那智勝浦や太地まで見通せる場所。眼下には岩礁と、透き通る海越しにそこまで見通せる。鯨を見つけると狼煙を上げたらしい。
この場所からの眺め自体が遠くまで見通せるが、さらに高台、木製の展望場があったが、一部破損しているようで登れなかった。機会があればここもまた来たいところ。
高野坂メインルートに戻ると弁慶の力石と呼ばれる大きな丸い石(岩)があり、それを過ぎると古道は石畳道となった。
もうすぐ終着地という所で三浦さんが声を挙げる。視線の先に小さな赤い物が動いたという。サワガニだった。女子の大声に驚いたのか、カニたちは動きを止めた。
そして、塩屋川を渡れば、三輪崎側の登山口に出た。慣れた人には1時間弱で踏破できるらしいが、寄り道をしながらだったためか、2時間以上かかった。とはいえ歩きやすい古道だった。オススメのコースだ。
旅の終わりは、高野坂近くの三輪崎漁港。港にはおなじみボラードがある。これがあると足を乗せるのがお約束状態の三浦さん。ここちよい疲労感が女子2人を包んでいた。
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