発見!お宝!湯浅町
2016/02/05
古い町は時の架け橋
醤油醸造の古い町並みが自慢の湯浅町。伝統的な建物群や地割が、その時代の様子をよく保持しているとして、2006年、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建、または、伝建地区)に指定された。和歌山県内では唯一の指定。
今も人が暮らす、その町並みは、現在と過去を結ぶ架け橋のようで、そこを歩いているだけで、タイムスリップをしたような錯覚にとらわれる。
湯浅町は、古くから町という形態をとってきた。醤油や味噌に代表されるが、食を含めた歴史・文化・そして、町並み、また、熊野古道が町の宝で、改めて見直すべきは見直して、まちづくりを進め、次の世代を担う子どもたちへの教育にも取り入れていきたいと、上山章善(うえやま・あきよし)町長は話す。
湯浅には詳しく記録が残っていないが、伝えられた、伝わった先方に記録があり、その事実を知ることがあるという。
例えば、町内にあったお堂を豊臣秀吉が目をつけ、京都の花の寺、醍醐寺で花見の宴を催すに際して欲しがり、解体して運び、火災で失われた本堂に立て直されたという話。この本堂(金堂)は平安時代の優れた宗教建築物として国宝に指定され、今は、古都京都の文化財として、世界遺産だ。
粉河寺の前にある湯浅桜。その名の通り、湯浅の豪族が育てた桜で、見事になったことから寄進されたが、そのことを知る湯浅の人は少ないのだとか。
湯浅町では、役場庁舎の高台移転に向け、新庁舎の建設が大詰めを迎えている。隣には、湯浅町と広川町を管轄する消防組合の新庁舎も。今月中に建設を完了し、来月にも内覧会を行い、5月の連休明けには業務を開始する予定という。
特徴は、専用の議場を持たないこと。年間20日間ほどしか使わないのだから、議会が開かれるときは議場となればいい。そんなわけで、多目的ホールが設けられ、平常時は住民が使い、災害時は避難所として使いたいという合理的な発想を採用。ホールの名称は公募され、このほど「なぎホール」と決定した。なぎは、湯浅町の木。
最近の驚いたことは、湯浅町が過疎地指定を受けたこと―上山町長が話し始めた。過疎地というと人里離れた山村のイメージだが、人口が減少してくるとそういうことになるのだと知ったという。過疎対策にも力を入れ、そこから抜け出さないといけないとも話した。
前述の湯浅の歴史・文化について、子どもたちの修学旅行で、京都の醍醐寺に立ち寄るようになったといい、新庁舎には、粉河寺前にある湯浅桜を株分け(?)してもらって植えたいと町長はいう。
役場庁舎の高台移転で、役場は安全で高機能となるが、現在の役場周辺の住民にとっては遠くなり、不便になる。このため、湯浅町では、JR湯浅駅前の観光案内所兼多目的広場に役場の連絡所を設け、利便性を確保するとしている。
余談だが、髭白アナが町長を訪ねた日(2月上旬)は、ときおり横殴りの雪が降っていた。湯浅では滅多に雪は降らないらしいのだが…。
町歩きのはずが、雨で…
風情のある町並みは雨でも風情があるはずと出かけた。それは間違ってはいなかったが、雨が強くなるにつれ、町歩きから、町家訪問へと変わっていく。まず訪れたのは、熊野古道沿いの立石(たていし)茶屋。熊野古道の道標が町中に立つおなじみの場所にある。約150年前の江戸時代の町家をリフォームして作られたという温もりある建物。中には、雑貨や小物、菓子などが所狭しと並ぶ。畳敷きの部屋に上げていただき、スタートして数分だったが、すっかり休憩モード。ほうじ茶ラテというおしゃれな接待にほっこりしてしまう。
茶屋の運営に携わる華道の先生でもある中内京子(なかうち・きょうこ)さんから、3月末で閉めると聞き、驚きとともに、残念な気持ちが広がった。
役場の産業観光課によれば、運営主体が代わるだけで、休憩所としての立石茶屋は存続するという。4月からは、湯浅町が運営する。毎日開けられ、お茶の接待などもあるという。
湯浅を訪れたらシラス丼は外せない。そこで、シラス丼マップを見ながら、歩く。「どこの通りだっけ?」思い切って、細い路地に入ってみる。1人通るのがやっと、という道幅の迷路のような路地をゆく。たまたま通っただけだが、これもまた面白い。伝建地区ではないが、町自体が良い意味で密集しているので、探索もいい。ケガの功名といえる。
創業は明治という日本料理の横楠(よこぐす)を訪ねた。仕出しや総菜の販売も行っているという老舗の料亭。その座敷で、シラス丼と天ぷらの定食をいただく。
代表の茶売陽子(ちゃうり・ようこ)さんに話を聞いた。店の成り立ちから、全国ご当地どんぶり選手権に行ったときのこと、湯浅のシラスについても。ちなみに湯浅では一年中シラスが水揚げされるが、旬はこれからの季節と秋口とのこと。
ようやく伝建地区へ。大正時代に開業した銭湯を使って、古い道具等を保存・展示している民俗博物館的な施設「甚風呂(じんぶろ)」へ。
銭湯ならではの展示・体験もある。山本郁美(やまもと・いくみ)さんの案内が心地よい。銭湯の番台、電動あんま機に座ってみる中川アナ。2階の和室には、レトロなラジオもあり、思わず操作してみたり。銭湯といえば映画のポスターというわけで、「昭和の映画ポスター展」に時代を感じた。かつては、このあたりにも映画館が2館あったという。
JR湯浅駅前の古由青果(ふるよしせいか)にも立ち寄った。
地元の産物を使ったジェラートがおいしい。中川アナは、マンゴー味を、髭白アナは、なぜか、きな粉味を。夏はもちろん、暖かな春になれば、ジェラートを食べながらの町歩きも良いに違いない。
シロウオ漁
湯浅町と広川町を流れる広川(ひろかわ)。その河口付近で、2月中旬からおよそ1か月間だけ行われるシロウオ漁。からだが透明な小魚で、産卵のために遡上するこの時期、伝統の四つ手網を操って、すくい取る。躍り食いが旬の味という。
3月7日は午後からシロウオまつりが行われ、漁の体験のほか、躍り食いやシロウオご飯が登場したとか。そして、夜には、観光夜漁が多くのアマチュア・カメラマンが雨の中、近くの橋の上からしきりにシャッターを切っていた。
伝建地区は催しがいっぱい
伝建地区では、様々な催しが行われる。展示スペースとしての町家が優れているのは間違いない。いや、町家に似合った催しを選んでいるのか、この辺はさすがというところ。2月から3月初旬は「ひな人形展」、3月初旬から5月初旬は「天神飾り」。
ゴールデンウィークには、恒例の「ゆあさ行灯アート展」が行われる。伝建地区には、その優秀作品を一年を通じて展示する行灯ギャラリーもある。
季節は春へ
2月上旬から3月中旬にかけ取材をした湯浅町。町長取材で訪れた時は雪に見舞われ寒く、その後、3月に入ってもなぜか、取材日に雨が続いた。しかし、先日(3月中旬)訪れると、新庁舎が完成間近となり、近くの田んぼではレンゲが咲き、ミツバチが蜜を求めて飛び回っていた。町家や細い路地では、渡ってきたツバメがすり抜けるように飛んでいた。季節はすっかり春になり、特産のシラスが旬の季節に入っていく。これからが町歩き本番、ぜひ、訪ねてほしい。
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