街を歩いていたり、車や自転車などで走っているときに、「ピヨピヨ、ピヨピヨ」また「カッコー、カッコー」という鳥の鳴き声のような音を耳にしたことはありませんか。それが、「音の出る信号機」が発している音(誘導音)です。
「音の出る信号機」とは「音響装置付信号機」のことです。一般の交通信号機に、視覚障害者用交通信号付加装置が付けられた信号機のことです。この装置は、原則として、青色点灯を音で知らせます。実際には、横断者のための装置ですので、「音の出る信号機」が設置されると、「音の鳴る交差点」や「音の鳴る横断歩道」となります。
警察庁によりますと、自動交通信号機の発足当時は、信号灯が青色から赤色に変わる中間の黄色点灯中に、ベルを鳴動させていたそうで、目の不自由な方に対しても信号の切り替わりが判断ができるようになっていたといいます。しかし、信号機が増加するにつれ、その騒音が問題となり、1937年末から廃止されます。
その後、全国に道路網が整備され、交通量が増え、それに伴って、交通事故が激増、交通戦争などと呼ばれる時代へ突入していきます。このため、各種の交通安全施策の一環として、1955年9月、東京都杉並区の視覚障害者施設付近の交差点に、ベルの鳴動により赤信号と青信号を判別できる「盲人用信号機」が登場します。「音の出る信号機」の原型です。
そして、ベル音に代わって、旋律を付けて感受性のよいものへという流れから、オルゴールやチャイムなどへと変化していき、バリアフリー対応型信号機の一つとして、全国に整備されていきます。
誘導音は、擬音式とメロディ式があり、当キャンペーンの基金の名称にもなっている「通りゃんせ」は、初期の「音の出る信号機」に使用されていたメロディの代表的なものです。代表的なものがあるとはいえ、「音の出る信号機」の誘導音や誘導パターンは多様化し、採用が各都道府県警の裁量だったこともあって、異なる方式が同じ地域に存在することも多かったといいます。そして、目の不自由な方をはじめとする障がい者の混乱も増えます。この状況を踏まえ、警察庁が、2003年10月に「視覚障害者用付加装置に関する設置・運用指針」を制定、各都道府県警に対し「擬音式の異種鳴き交わし方式を整備するよう」通達が出されました。これ以降は、新設の信号機はもとより、信号機の更新の際に置き換えられているそうです。
「擬音式の異種鳴き交わし方式」とは、主に鳥の鳴き声で、道路の方向などにより、鳴き声が異なるというものです。「カッコー」(東西、または、主道路横断用)と「ピヨピヨ」(南北、または、従道路横断用)などです。そして、和歌山県内の音の出る信号機はすべて「擬音式の異種鳴き交わし方式」となっています。
和歌山放送では、昨年度(2015年度)の「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」に寄せられた浄財で、新たに「音の出る信号機」2基を和歌山県に寄贈しました。第31回となる今年度のキャンペーンの24時間特別番組がスタートする12月24日正午にも、このうち1基が和歌山市内で新たに稼働します。
この2基をあわせ、和歌山放送ラジオ・チャリティ・ミュージックソンに寄せられた「通りゃんせ基金」で設置された「音の出る信号機」は102基となりました。このうち和歌山県内設置分は93基です。
和歌山県は「音の出る信号機」が多いことでも知られています。実数では、決して1位ではありませんが、信号機のある交差点に占める音の出る信号機の割合が、ダントツ1位を続けています。和歌山県内では、信号機の5台に1台が、音の出る信号機です。もちろんこれは、和歌山県や和歌山県警の視覚障がい者にやさしい交通政策のたまものですが、その一翼を担うキャンペーンとして、ラジオチャリティミュージックソンを続けていくスタッフ全員の励みになっています。そして、それは、とりもなおさず、ご協力いただいた皆さんのおかげです。
※和歌山放送ラジオチャリティミュージックソンに寄せられた浄財で寄贈した音の出る信号機の市町村別設置実績(今年度設置分を含む)は次の通り。
【和歌山県】 和歌山市32基、田辺市12基、新宮市10基、白浜町6基、橋本市5基、海南市・上富田町各4基、岩出市・御坊市各3基、紀の川市・かつらぎ町・那智勝浦町・串本町各2基、有田市・有田川町・広川町・湯浅町・日高町・みなべ町各1基
【大阪府】 泉佐野市5基、貝塚市・阪南市各2基